SIMMONSは1978年にデイブ・シモンズが興したイギリスの電子打楽器メーカー。

日本での使用アーティストはCCBなどが有名だが、国内外問わず80年代のサウンドを代表する程、当時の音楽にはこれでもかと言うぐらい使われた。
日本でSIMMONSと言うと、SDSV(5)が有名だが、ここではそれ以前からのモデルも海外の情報を元にわかる限り解説していく。

SDSⅢ(3)とSDSⅣ(4)は、正にアナログ・シンセサイザーの様なサイドパネルに木板を用いたラップトップスタイルの音源で、この頃のパッドは他社によくみられた缶詰の様な円形のパッドであった。

1979年には試作的要素の強いSDS2が登場。(不明な要素が多い)
[Pitch]-[Attack]-[Decay]-[Bend]-[Noise]-[Noise T]
この6つで音色を作って行く。製造年から考えてこれを元に翌年のSDSVが開発されたのかもしれない。

その後、SIMMONSの名を世に知らしめたSDSVが登場すると、国内のメーカー(PearlやTAMA)も真似するかの様に多角形のパッド形状をした電子ドラムを登場させるが、やはり音色では本家SIMMONSには敵わない。
なお、このSDSVが登場するまでにもPollard社(米国)の『SYN-DRUMS』や東洋楽器社の『ULT-SOUND』等が存在したが、これらの外見は缶詰の様なタムだけのパッドしかなく、使い方も生ドラムに混ぜて使うのが前提的な雰囲気であり、バスドラム・スネアドラム・タムタム・シンバルと、『ドラムセット』としての形態を採用したSIMMONSのSDSVは正に現代の電子ドラムのスタイルを確立した存在なのである。
そして何より驚くのはそのサウンドであろう。

SIMMONSサウンドの特徴、、、それはトーン(基本となる音)とノイズ(スネアドラムで言う響き線の様な音)をそれぞれフィルターで加工して、最後にアタック部を個別のノイズ成分を足すことによって得られるアタッキーでワイルドなサウンドである。

それまでのシンセドラムの音色が丸っぽいサウンドだったのに対して、エッヂの立った強烈なサウンドは一気に人気を博した。
もちろん、Dr.スランプアラレちゃんのテーマソングでお馴染みのSYN-DRUMSの『ピュクキュ~ン』という音や、YMO等で使われたULT-SOUNDの音もSIMMONSで作れてしまうことは、意外にも知られていない。

この時代はYAMAHAのDX7等の比較的派手なサウンドが音楽を彩っていたので、生ドラムにもエフェクトを積極的に使う(Phil CollinsやThe Power Station等、ゲートリバーブを掛けたサウンド)等、とにかく音作りが派手な時代でもあったので、SIMMONSのサウンドはこの時代に君臨していった。

その後、テクノロジーの発展により登場したのが後継機種のSDS7である。
これは『シンセドラム』としてのSIMMONSの最高峰音源であり、サンプリングを主体とした晩年のSDXとは違う意味でSIMMONSのフラッグシップ機である。
この音源の最大の特徴は、EPROMによるサンプリング音源も備えたことである。
当時のサンプリング技術は、サンプリングタイムが比較的短く済むドラムマシーン等で盛んに使われており、Linn DrumのLM-2やOberheimのDMX等がその代表である。
このサンプリング音源部をそのままSDSVに融合させたのがSDS7であり、その他にもシステム的にかなり機能向上がみられる。
このSDSV譲りのアナログ音源部と、サンプリング音源のデジタル音源部はそれぞれ独立してエディット出来る他、ミックスして出力することも可能である。(ただし、ノイズやフィルター部は共用)

これらにより、SIMMONSのサウンドは進化していったが、これらはすべてハイグレードな製品たちであり、いわゆる一般ユーザーには到底手の出せない機材であった。その為SIMMONSでは、ライトユーザーでも手が出せる製品をと、廉価版機種を開発して行く、それがSDS9やSDS1000等である。これらは、上位機種のSDSVやSDS7に比べてサウンドのエディット幅や搭載されている音色そのものもあまり良くないが、それでもSIMMONSっぽい音は鳴らせた。
そして、これらを補完するかの様に様々な1Uラックサイズの音源等が開発されていく。MTX9は、パーカッションサウンドを中心にサンプリングした音源、SDEはFM音源を採用した音源であり、その他にシグナルプロセッサーとしてTMIやMTM、SPM 8:2等がある。

時代と共にテクノロジーは更に進化し、遂にSIMMONSの社運(良くも悪くも)を背負ったマシンが登場する。それが、SDXである。

SDXはそれまでのSIMMONSの音源やパッドとは丸っきり異なり、それまで圧電素子でトリガー検出していたパッドはフィルムセンサーを採用している。
そして音源はAppleコンピューターを搭載した大型の物になり、フィルムセンサーから得た情報を元に、叩いた場所や強さ等に応じてレイヤーやベロシティ等を設定して行くことが可能となっていた。
この音源は完全なサンプリング音源であり、フェアライトとほぼ同じ構成のマシンである。

まだRolandのV-Drumが存在しない遥か昔のこの時代に、こんなモンスター級のエレドラが存在していたのであるが、登場したのが早過ぎたのか、これを境にSIMMONSは衰退して行く。これは音楽の流れが変わったことも要因の一つではあるが、時代的にこんなハイスペックのマシンを作っていては企業としての採算が取れるはずがなく、また、そもそもこれを使うドラマーが電子楽器には馴染みが薄かったので、電子ドラムそのものの人気が衰えて行ったのだ。

つづく。。。